農のかたち〜私流〜

「おいしい」の声がやりがい

岩手県沿岸北部に位置する洋野町で、両親と妻、パート7人でイチゴ10a(ハウス2棟)、フルーツトマト15a(ハウス4棟)、キュウリやホウレンソウなどの野菜、水稲1.2‌haを作付けする剛さん。地元への帰郷を機に両親の元、農業の世界に飛び込んだ。長年勤めたIT関連の仕事との違いはあるものの「おいしい」と言う消費者の声に農業のやりがいを感じている。

地元で探した仕事

実家が農家だった剛さんは、小さい頃から家の手伝いをすることが日常の中にあり「農作業が終わらないと夕食が食べられなかったので、必然と手伝うようになっていた」と話すが、情報処理関連の仕事に興味があった剛さんは大学に進学し工学部を選んだ。その後は、IT関連の企業に就職し仙台を拠点に関東へ行き来するなど、順調に仕事をしていた。

トマトの栽培をしている様子

しかし、11年目に中京地区への異動の内示が出た。「内示をもらった異動先に行くとやりがいはあるものの、その部署からはしばらく離れられないという話しを聞いていた。いずれは地元に戻ると決めていたので、このタイミングで実家に戻り仕事を探す決断をした」と当時を話す。

地元に戻り求職活動をしていた剛さんだが、なかなか思うような就職先が見つからなかった。そんな時、実家の農業施設、そしてノウハウを持った父の存在があることに気付き、農業を仕事にする選択をした。IT関連の仕事とは違うが、農業は生まれ育った環境の中にあり抵抗を感じなかった。

いちごの栽培をしている様子

ITから農業へ

就農を決めた剛さんは、新たにイチゴ栽培を始めることにした。「以前、父がやった経緯があり手応えはあったが、多忙で手入れが間に合わずやめたと聞いていた」と話す。本格的に栽培を学ぶため、八幡平市でイチゴを栽培する農家での研修など準備期間を経て平成28年6月に就農した。

イチゴ栽培を始めた剛さんだが、当初は病気の発生に気付かず防除の遅れなど、思うようにはいかなかった。「普及センターや研修先から聞いてばかりでした」と話す。しかし、3年を迎える頃にはポイントも掴み、自らの課題も見えてきた。「この頃から、分からず聞いていたことも理解できるようになってきた」と話す。病気も事前に予防でき、新たな品種の導入や苗づくりなど技術の向上により、当初2月からの出荷も12月から出荷できるようになっている。

いちごの収穫をしている様子

「IT関係の仕事はやった通り形になるが、農業は結果が出るまで時間がかかり天候にも左右される。自分でコントロールできない難しさもあるが、消費者からの『おいしい』の声が一番のやりがいですね」と笑顔を見せる。おいしいイチゴを届けるため完熟出荷を心がけ、トマトも甘みが強い中玉のフルティカを導入するなど、消費者に喜ばれるためのこだわりが見られる。

収穫されたいちご

将来に向けては、父からフルーツトマトの詳しい栽培技術の継承を進め、環境制御などスマート農業も導入しながら規模拡大を視野に入れている。消費者目線に意識をおきながらも、自らの農業経営の先も見据えている。

プロフィール

明戸 剛

明戸 剛 あけと たけし さん

2歳になった子どもが走りまわり、子ども中心の生活ですが楽しい時間を過ごしています。

※広報誌「夢郷」 2024年5月号掲載時の情報です。掲載情報が変更となっている場合がございます。