葛巻町で、搾乳牛100頭、育成牛80頭を従業員ら6人で飼養管理する株式会社Peace Valley Dalryの代表を務める八幡さん。祖父の代から続く酪農を受け継ぎ、タイミングをみながら規模を拡大してきた。先輩農家に助けられた恩を胸に、平成31年には法人化し、酪農業界の未来を見据えている。
実家が酪農家で将来は家を継ぐと考えていた八幡さんは、盛岡農業高校に進んだが卒業後は一般企業に就職した。「雇われて働くことにモチベーションが上がらなかった」と当時を話す。21歳の時から酪農の世界で働き始め「やったことが、良くも悪くも自分に返ってくることが、仕事のやりがいに感じられた」と笑顔で話す。
当時は、現在の半分以下の経営規模だったが、人や時期を見計らい、タイミングを意識しながら規模拡大を進めてきた。「牛だけ増やしても、餌の作付けが間に合わない。土地があっても働く人がいないと作業が進まない」と話す八幡さん。土地が元々あった訳ではなく畑を借りながら現在の規模になっている。牧草地も点在しているため、効率的な作業が求められてきた。常に考えながら働くことで、サラリーマンとの違いも感じていた。
その後、子どもたちと一緒に働くようになり、将来のことを考え平成31年1月に法人化した。「子どもたちに小遣いではなく、ちゃんと給料としてお金を渡したいという気持ちもあった。今後は雇用する事もあると思うので、会社という枠組みで金銭感覚や考え方を身に付けてほしい」と、胸の内を語る。世の中の流れやタイミング、効率化を意識してきた八幡さんの決断だった。
乳牛の改良に力を入れてきた八幡さん。共進会での入賞のよろこびもあるが、人との出会いや学びの気持ちを大切にしてきた。共進会での繋がりが広がることで、各地の牧場視察にも足を運んできた。「改良によって経営にプラスになることはあるが、人とのつながりを大切にしてきた」と話す。視察で見た良い事例は自らも取り入れ、経営にも生かしてきた。他県で獣医と知り合ったことをきっかけに、当時では珍しい受精卵移植をはじめ、和牛導入のきっかけにもなっている。また、酪農業界の枠を超えた交流も大切にしてきたことも、自らの経営判断に生かされていると感じられる。
そして、現在まで酪農家としての八幡さんの大きな基礎となっているのが、地元の酪農家の先輩たちだ。約20年間、地元で酪農ヘルパーとして働いた中で多くのことを学んできた。「乳牛の飼い方やエサなど、飼養管理についても学ばせてもらったが、お金の稼ぎ方や作り方など、お金の面でも学ぶことが多く感謝している」と話す。
現在は、次の世代が酪農を続けられることに目を向け「あるものを利用して経費を抑える必要がある時代。牛の世話と牧草などの生産を分けるなど、酪農の新しいカタチをみんなで考えていく時代だと感じている」と話す。131年続く東北一の酪農郷を未来に繋げていこうという気持ちが感じられる。
ゴルフが趣味の八幡さん。「楽しみながらプレーしています」と話し、交流を広げるきっかけにもなっています。
※広報誌「夢郷」 2023年10月号掲載時の情報です。掲載情報が変更となっている場合がございます。