令和元年に新規就農した守さん。現在は妻と季節雇用2人などで60aの圃場に約15品種のリンドウを作付けしている。花という商品特性を考え、出荷するリンドウの姿の良さを意識し、こまめな圃場管理で良質なリンドウの出荷に努めている。
東京でIT企業に勤めていた守さん。サラリーマンとして20年以上勤めてきたが、歳を重ねる中で将来のことを考えるようになっていた。「このままサラリーマンを続けると60歳で定年を迎え、その後は雇用延長…。そんなことを考えるようになり、自分で続けられるものはないかと考えるようになっていた」と話す。その頃から、農業に興味を持つようになっていた。
そんな中、東京で開催されたIターンUターン説明会で、地元の「一戸夢ファーム」に出会った。2年間、農業の基礎を学びながら新規就農の準備ができる研修制度があり、トマトやリンドウなど、さまざまな野菜の栽培を学ぶことができる。地元には戻るが、実家の農業とは別の経営を考えていた守さんは、リンドウに興味を示した。「初期投資が比較的かからず、リンドウは日本一の産地として確立されている。作っても売れないという不安がないのも決め手の一つ」と考えた。
地元の一戸町に戻り、平成29年から2年間リンドウ栽培を中心に農業の基礎を学んだ。
研修を経て令和元年に就農し、30aの圃場から栽培を始め、現在は60aまで拡大してきた。しかし、規模拡大にあたり、情報の少なさに苦労した。「圃場を借りるためにどこに相談すればよいか分からず、苦労した」と話す。圃場の状態や場所によっては効率も悪くなるため、3年かけて現在の規模まで拡大。また、家族の生活拠点が落ち着くまでに2回引っ越し、昨年やっと落ち着き、リンドウ栽培に集中できるようになった。
研修期間があったことで分からないことを聞くこともでき、「先輩農家から教えてもらうこともあり、動画サイトを参考にすることもある。失敗したら改善し自分にあったやり方を見いだしています」と話す。失敗して手間が掛かった経験も、今の守さんの経営に生かされている。そして「リンドウは、葉の1枚に虫の被害があるだけで印象は変わる。普段から高品質を意識し、価値を高めていきたい」と話す守さん。花という商品特性を理解し、良質なリンドウを出荷するため、日頃からこまめな管理作業や病害虫防除を意識している。
「今の規模で10年先を見据えたリンドウ栽培を続けたい」と話す守さん。収益性を考慮した今後の品種構成も検討する他、リンドウ栽培を始める人が増えるための取り組みもしている。「生産量があることが産地としての信頼につながる。これから就農してリンドウ栽培を始める人に経験を伝えたい」と目を細める。そして「地域の人にリンドウをもっと身近に感じてほしい」と話し、一戸町のオリジナル品種「縄文の舞」の生産拡大にも力を入れている。
旅行が好きな守さん。「キャンピングカーで九州をゆっくり回りたい」と話す。
※広報誌「夢郷」 2023年6月号掲載時の情報です。掲載情報が変更となっている場合がございます。