農のかたち〜私流〜

地力の向上で 良品出荷を

平成26年に就農した学さん。現在は、父とパート2人を雇用し、ハウス16棟(32a)で雨よけホウレンソウを生産している。たい肥をしっかり入れた土づくりによる地力向上で、品質向上や収穫作業の効率化、コスト削減につなげている。

「農業」という就職の選択

高校卒業後、東京で鉄道関係の会社に就職した学さんだったが、3年が過ぎた頃、母が体調を崩したことがきっかけで、実家に戻ることを考えていた。地元での就職先を探していた時に偶然テレビで見たのが、現在の農業が抱える問題だった。「農業の世界では、耕作放棄地や後継者不足が問題になっていることをテレビを観て知った」と話す。これがきっかけで「農業」という就職の選択をした学さんは地元に戻ってきた。

どうやって農業を始めるか分からず市役所などに相談し、農業大学校を薦められた。2年間、農業の基本を学びながら、実際に地元で何をやるのかを考えていた。親戚が雨よけホウレンンソウを生産していこともあり、久慈地域の特産でもあるホウレンソウに栽培品目を絞った。

卒業後は、親戚のホウレンソウ農家で1年間研修した。「多い時には1日で100箱以上出荷する時もあり、忙しい中にも農業のやりがいを感じました」と、当時を話す。日々の仕事をこなしながら着実に技術も身に付けていった。そして就農に向けて、JAや関係機関に相談し圃場を探し、離農する方から現在の圃場とハウスを譲り受けることになった。

ホウレンソウを収穫する学さんの様子写真

ホウレンソウ産地の農家として

就農当時は完全な状態でのスタートとはいかず、雑草に覆われた圃場や大雪で潰れたハウスもあった。雑草や湿害があるとホウレンソウが採れないことは研修で体験して理解していた学さんは「就農当時は、機械を借りて除草剤を播いたり、バックホーで明渠を掘り排水対策をしていました」と話す。圃場作りの大切さを知っていたので、地道な作業を繰り返し、4年目になる頃には圃場の状態も良くなっていた。

そして、土づくりにこだわる学さんは、たい肥をたっぷり使うことで微生物を増やし、年4回種を播くが、その都度深耕して土を柔らかく保つようにしている。「土が硬いと収穫作業に手間がかかるので、土を柔らかくするように意識している。また、地力がつくと肥料も抑えられるのでコスト削減にもつながる」と話し、品質・作業効率・コスト面への意識の高さが感じられる。

ホウレンソウを収穫する学さんの様子写真

農業のやりがいについて「土を耕し畑ができていくよろこび。そして、成長してくると収穫するというサイクル」と話し、年4回転させホウレンソウを収穫している。そして「始めたからには続けていき、これから始めようとする人が『ホウレンソウ農家は良い』と思える経営体になるよう技術も磨きをかけていきたい」と目を輝かせる。

「支えてくれる方々への感謝の気持ちを忘れずに、試行錯誤を重ねながら進んでいきます」と話す学さん。県内一のホウレンソウ産地での挑戦はこれからも続いていく。

ホウレンソウを収穫する学さんの様子写真

プロフィール

北村 学

北村 学 きたむら  まなぶ さん

「映画鑑賞が好きで、時間があるときは色々な作品を観ています」と話す学さん。壬生義士伝などの時代劇が特にお気に入りです。

※広報誌「夢郷」 2023年5月号掲載時の情報です。掲載情報が変更となっている場合がございます。