岩手山の北側に位置し、農業が盛んな八幡平市で、両親、祖父母と約1.3haでリンドウを栽培する衆磨さん。農業大学校や民間企業でリンドウを学び、実家に戻り3年目を迎える。
リンドウ農家の長男として育った衆磨さん。中学生まで、お盆や彼岸の最盛期には出荷の手伝いや家の事を手伝っていた。「実家はリンドウ農家で、物心がついた頃にはリンドウが身近だったので、あまり抵抗はなかった」と当時を話す。しかし、当時は普通に企業への就職を考えていた。高校進学の時は将来の就職の事を考え工業高校を選んだ。金属加工などの技術を学び、高校進学を機に実家を離れ生活していた。高校3年生になり卒業後の進路を考えていた衆磨さんだったが「就職の事を考えて進学したが、将来のビジョンが見えなかった」と話す。そして、生まれ育った実家でのリンドウ栽培が頭をよぎる様になっていた。「それなりに面積もあったので、自分が継げば、そのリンドウ畑がなくなることはない」と考え、家族にも相談し、就農に向けて農業大学校へ進学し、リンドウについて学ぶことを決断した。
農業大学校では定植から収穫まで、リンドウ栽培の一通りのプロセスを学び、鉢物リンドウの研究にも力を入れていた。また、将来の就農に向けて卒業後は県内でリンドウを生産する企業に就職。「収穫や選別の作業ひとつをとっても正確性やスピードが求められる。大学校では学べないことを経験することができた」と話す衆磨さん。
決断から7年間リンドウの生産者を目指して、さまざまな形でリンドウに携わってきた衆磨さんは「品種ごとに違うリンドウの深い色合いや形が、他の花に比べてカッコいいと感じています」と笑顔で話す。実家での就農を前提に就職した会社の5年間の勤務を経て25歳の春に実家に戻り就農した。
「実家に戻り最初に感じた事は、今までの経験より出荷規格が厳しいことでした」と話す衆磨さん。「安代りんどう」というブランドを守りつづけている産地としての責任の重さを実感した。「ひとつひとつの作業をしっかりやることが大事とは分かっている。それを、しっかりやっている家族を改めて尊敬しました」と話す。
「リンドウは仏花のイメージがあるが、夏には涼しい気持ちになれる花だと思う。色々な品種があるので気にして見てもらい、普段使いしてほしい」と魅力を話す衆磨さん。「好きな品種は10月頃に咲く『夕映』という品種ですね」と笑顔で話す。リンドウという花に魅力を感じ、実家を継ぐ道を選び「両親からも喜んでもらっているので良かったと感じています」と笑顔を見せる。今は、基準をクリアする品質の高いリンドウを出荷できるよう、日々勉強しながらリンドウ畑で汗を流している。そして「将来的には規模拡大を目指していきたい」と目を輝かせる。
今まで得た経験に、実家でのやり方をしっかり吸収し、産地を守る生産者として歩みを進めている。
読書が好きな衆磨さん。時間があるときは心理学や哲学の本なども読んだりしています。
※広報誌「夢郷」 2022年9月号掲載時の情報です。掲載情報が変更となっている場合がございます。