岩手県の県都、盛岡市に隣接する滝沢市で、ネギ60a、トウモロコシ30a、ニンニク5aなどの野菜を作付けする樹李さん。新規就農から3年目となり、夫と力を合せてネギを経営の柱とした営農に取り組んでいる。
幼少期のころ、実家では祖父がリンゴと水稲を営んでいた。りんご畑に行って遊んでいた樹李さんだったが、農業に興味を持つことはなかった。簿記に興味があった樹李さんは一般企業に就職し、事務の仕事をしていた。
30歳を過ぎたころ、当時の社長がロハス(地球環境と人との健康を重視し、持続可能な社会のあり方を志向するライフスタイル)に興味を示し「これからは農業だ」という話しをしていた。その言葉にピンときた樹李さんは「祖父が以前やっていたリンゴ園は木を切り、今は畑になっている。その畑が使えれば農業を始められるのではと思いました」と当時を話す。当時は知り合いに畑を貸していたが、農業をやるのであれば畑は使えることになり、就農に向けて動き始めた。
農業の知識は全く無かった樹李さん。畑があってもやり方も分からない状態だったので、平成29年から岩手町の農業法人に就職し、野菜づくりを経験した。「最初に感じたのは規模の大きさでした」と苦笑いする。キャベツやトウモロコシの収穫作業などもこなし、初めて農業という仕事を経験した。「大変なりにも農業の楽しさも感じました」と笑顔で話す。また「ひとつひとつの作業以外にも、良い野菜づくりへの思い、品質へのこだわりなど、栽培技術以外にも野菜づくりの大切な事も学ぶことができました」と話す。
その後、アルバイトをしながら令和元年から先輩農家などから教えてもらいながら、実家の畑で野菜を作り始めた。翌年からは、キュウリやピーマン、ナスなどの夏野菜を中心に作付けし出荷していたが、多品目の作付けで忙しく、休みもない日が続いた。「さまざまな作業があり、追われるような日が続きました」と苦笑いする。
令和3年の冬に、関係機関と今後の経営について相談した樹李さんは、ネギを経営の柱にすることにした。近年、滝沢市での作付けも増えている品目だ。「まわりで作っている人が多いこともあり、ネギを経営の柱にしました。また、今まで経験してきたトウモロコシとニンニクを中心の経営で動き始めました」と笑顔をみせる。
「将来は法人化して、雇用を生み出し地域を活性化していきたい。そして、農業をやろうという人を増やし、食料自給率を上げていければと考えています」と、胸の内を話す。「そのためにも毎日が勉強。先輩農家に追いつけるよう、日々学びながら一歩ずつ進んでいきたい」と笑顔を見せる。
「農業の魅力は自分次第。手を掛けた分、いい野菜ができる。今は『おいしい』という声が、もっとおいしい野菜を作る原動力です」と話す樹李さん。農家としての不安と期待を胸に、夫と二人三脚で夢に向かって歩みを進めていく。
ドライブが好きな樹李さんは「農閑期には夫と車で旅行し、いろいろな所に行ってみたい」と笑顔で話します。
※広報誌「夢郷」 2022年8月号掲載時の情報です。掲載情報が変更となっている場合がございます。