岩手山と姫神山を望む盛岡市渋民で、夏イチゴを栽培する潤さん。4年間の研修を経て今年独立し、ハウス2棟でイチゴ栽培を始め6月下旬から出荷が始まっている。
サラリーマン家庭で育った潤さんにとって農業といえば、父に連れて行ってもらった祖父母の家での田植えや稲刈りの手伝いだった。幼いながらも、汚い、辛いなど良いイメージを持っていなかった。
転機を迎えたのは、勤めていた映像制作会社の仕事で生産者の取材に行くようになった時だった。「今の農業の現状を見た時に、以前、自分が思っていた農業とはイメージと違った」と話す。スマート農業の普及も進んできて、IT関連の仕事をしていた人が転職し、農業をしている人も実際に見てきた。以前はシステムエンジニアの仕事もしていた潤さんは「IT関係の仕事をしていた人が農業をしているのだから自分でも農業ができるのはないか?」と農業に興味を持ち始め、新規就農相談会へも足を運んだ。そこで言われたのが、先に何を作りたいかを決めることだった。
農業の知識はなかったが、イチゴが好きだった潤さんは自分で作ってみたいと考え、すぐに行動に移した。八幡平市でイチゴを栽培しているサラダファームで独立に向けて4年間イチゴ栽培を学んだ。「当初は3年の予定でしたが、農地や資金などの関係で1年延びました。JAの融資担当とも色々相談し当初の計画からは変わりましたが、結果良い環境で始めることができました」と話す。
また、経営面を考え夏イチゴの栽培を選んだ。「冬場のイチゴ栽培は暖房費がかさむため、研修先で知った無加温で栽培できる夏イチゴを選んだ。夏場のイチゴは出荷量が少なく希少価値も高い」と話し、潤さんのイチゴ栽培の挑戦が始まった。
独立を目標に研修してきた4年間の経験と知識をもとに、作業を進める潤さん。大きな失敗はないものの、収穫が始まるまでは不安を感じていた。「ちゃんと実がなり収穫できるか不安でしたが、収穫できた時はホッとしました」と笑顔を見せる。
また「自分で作ったイチゴを食べた人からは『おいしい』などの声や反響もあり自信になる」と、歩み始めた農業の道に魅力を感じている。そして、確実に出荷していくために計画を組み、先読みすることでリスクを回避している。会社員として働いてきた感覚が農業でも生かされているようだ。
「目指す農業の姿は、ハウス内統合環境制御によるスマート農業の確立で家族との時間をとれるワークライフバランス」と潤さんは話す。現在は、雨センサーと温度センサーでハウスの開閉とかん水作業は自動化している。今後は遮光や湿度、CO2などの自動化を考え、将来的にはネットワークで自宅にいながらハウス制御を行うなど、最大限の効率化を目指している。
「自分1人の労働力なので、スマート農業による効率化で管理作業に集中し、品質の高い夏イチゴを出荷したい。そして、この地域で夏イチゴを栽培する人は少ないので、おいしい夏イチゴを届けて知名度を上げていきたい」と、農家として力強く歩み始めている。
収穫した夏イチゴを手に笑顔を見せる潤さん。家族との時間を大切にしています。
※広報誌「夢郷」 2021年10月号掲載時の情報です。掲載情報が変更となっている場合がございます。