岩手山麓を望む雫石町で両親とネギ2.7ha、水稲4haで農業を営む明誠さん。2年前に農機メーカーを退職し、農家として歩み始め今年で3年目になる。
祖父や両親が農業を営み、小さい頃から農作業を手伝い育ってきた明誠さん。小学生からアルペンスキーを始め、冬は練習や大会に専念していた分、夏場の休みには家の農業を手伝うという生活を高校まで続けていた。
その頃「もしかしたら自分が家の農業を継ぐのではないかと感じていました」と当時を話す。高校卒業後は岩手県立農業大学校へ進み農業について学び、卒業研究では実家で栽培しているネギをテーマにした。
「両親が栽培するのを見てきたし、自分が農業をする時はネギを経営の柱にしようと考えていた」と話す。卒業後は一般の会社に勤めるよう父からの勧めもあり農機メーカーに就職し、会社員としての経験を経て、実家に就農し農家としての生活が始まった。
就農して感じたのは「新鮮」という感覚だった。会社員として働いていた頃は、会社の上司からの指示で働いていたが、農業は自分次第という違いを感じた。
「農業は、作業を日々積み重ねていくので、すべてが自分次第。サラリーマンの時に比べて気持ち的に楽になった反面、全部が自分の責任という農業の一面を実感した」と、今までとは違う緊張感を感じていた。
基本的な作業は、高校生まで手伝っていたので抵抗もなく、父の指導を受けながら管理作業なども学んでいった。また、2年目からは経営の柱となるネギの栽培に組み合わせられそうな野菜の栽培にも取り組み始めた。ネギの出荷は7月下旬から12月下旬までなので、ネギの出荷前に収穫できる野菜として、ブロッコリーやレタス、キャベツなどを作付けした。
「ネギを補填する品目として始めたが、ネギの管理作業を圧迫されてしまいました」と苦笑い。まだ手探りではあるが、将来の経営を意識し、自分なりに前を向き進んでいる。
また、ネギを経営の柱に考える明誠さんは「小さい頃から父の作業を見てきたし、まわりにも慣れて分かっている先輩方がいるのが大きい。収穫期間が長いのも強みだが、父がいることが最大の強みですね」と、父の存在の大きさと農家の見本としての感謝の気持ちが強い。
そして「ネギは他の野菜に比べて手間と時間がかかる。栽培の難しさも実感しているが、知識と経験を積み重ね、しっかり良いものを作っていきたい」と目を輝かせる。
農業を始めて3年目になる明誠さんだが、農業大学校の同級生など同世代で先に就農している仲間がいる。「やっている品目は違うが身近な存在で、日々勉強させてもらっています」と笑顔を見せ、心の支えにもなっている。
父が築いてきたネギの栽培を受け継ぎながら、自分なりの品目を確立させることで安定した経営を目指す明誠さんは「今は、父から教わりながら経験を積み、将来的には規模を拡大し地域の農業を盛り上げていきたい。そして、自分がしっかり経営できるようになり、親に楽をさせたい」と笑顔をみせる。
最近は釣りも始めた明誠さんだが、「小学生から始めたスキーを続けていきたい」と話す。
※広報誌「夢郷」 2021年8月号掲載時の情報です。掲載情報が変更となっている場合がございます。