冷涼な気候を活かし、東北一のレタス産地である一戸町でレタスを栽培する勝利さん。現在は約12haでレタスを作付けし、6月中旬から10月上旬まで出荷している。
勝利さんが生まれ育った一戸町奥中山地域は、昭和46年に夏秋レタスの産地指定を受けるなど、レタス栽培が盛んで、年々栽培面積が拡大していた。その中、5人姉弟の長男の勝利さんの子どもの頃の遊び場は両親が栽培するレタス畑だった。幼い頃から畑で働く親の姿を見ながら育ってきた勝利さんは「子どもの頃から、いつかは就農するだろうと思っていた」と話す。高校卒業後は、ごく普通に就職して働いていたが、28歳の時に就農した。「特別なきっかけはなかった」と笑顔で話す勝利さん。子どもの頃から心の中に「レタスを作る」という意識が根付いていたのだろう。
「就農した頃は防除が間に合わないとか、とにかく失敗ばかりでしたね」と苦笑いする。しかし、何事も前向きな勝利さんは、失敗する中での「学び」も大切にしてきた。
そして、父から経営を引き継いだのは就農から2年目の30歳の時だった。レタス農家としての先を見据え、その頃から契約栽培を始めた。40aほどから始めたレタス栽培も、現在では12haまで規模を拡大してきた。「後ろを振り向かないタイプなので、勢いでここまできましたね」と笑う勝利さんだが、契約先からの要望に対応するための拡大であり、作業効率を考えた圃場選びや、より自身の圃場にあった品種選びも行ってきた。「レタスは露地栽培なので天候の影響を受けやすい。常に試行錯誤しているので失敗することもありますよ」と、笑顔で話す中にも真剣な眼差しを感じられる。
レタスの栽培管理は3月から8月までは種まきと定植作業、6月中旬から10月上旬までは出荷作業が続くが、失敗から多くを学んだ勝利さんは契約したレタスを出荷し、信頼関係のなかで契約栽培が続いている。
契約栽培を始めた頃から、外国人技能実習生を受け入れている。現在3人の実習生と妻の優香さんとレタス栽培をしているが、夏休みには小学5年生になった息子も収穫を手伝い、家族揃って作業することもある。「息子は土いじりや機械が好きで、よく畑で遊んでいますね」と目を細める。将来はお父さんみたいに農業をやりたいと話しているようだが「自分がやりたいことを一生懸命やってほしい」と話し、今は家族との時間を大切にするために、しっかり休みがとれるよう作業の効率化など工夫している。
また、冬場の収入を確保できる品目を選定している。昨年は、キャベツ、寒じめほうれんそう、短根ゴボウを作付けするなど、常に創意工夫しながら農業と向き合っている。
現在は、レタス専門部の役員を務めている勝利さん。「奥中山地域はレタスの産地としてやってきた。作れば売れるという時代ではないので、日々研究しながら良いレタスを作り『奥中山高原レタス』というブランドを守っていきたい」と、真っすぐ笑顔で農業に取り組んでいる。
家族との時間を大切にする勝利さんは、冬は息子のクロスカントリーの応援にも足を運んでいます。
※広報誌「夢郷」 2021年6月号掲載時の情報です。掲載情報が変更となっている場合がございます。