農のかたち〜私流〜

年間を通して 花のある産地に

リンドウの生産量日本一の八幡平市で鉢花を生産する有城さん。両親と祖父、妹と年間約9万鉢を生産し出荷している。ブランド「安代りんどう」のオリジナル品種や、八幡平市のみで生産されている「エンジェルウィングス」を中心に栽培し、年間を通して出荷。施設栽培の強みを活かし、リンドウだけじゃない「花の産地」の未来を夢見ている。

ブレないビジョン

祖父の代から花農家で当初はリンドウの切り花を生産していたが、父の代から年間を通して農業で食べていくため鉢花の生産を始めた。「昔は出稼ぎが当たり前で、農業で1年間稼げるようにと父がハウスでの鉢花の生産に切り替えた」と話す。有城さんが小さい頃からハウスの中には様々な花が並び、中でもシクラメンが好きだった。

花の世話をする様子

そんな中で育ったこともあり、将来は鉢花を作るというビジョンを持っていた。「他の仕事をするという選択肢は自分の中にはなかった」と当時を話す。高校では簿記や経理などを学び、その後、農業短期大学校に進んだ。

花の世話をする様子

しかし「花農家を目指してはいたが、農業の基本を全く知らないことに気付いた。その時に初めて、何をどうすればどうなるという基礎を学びました」と苦笑いする。卒業後は、県外でシクラメンを生産する農家で1年間研修し、実家での就農の時を迎えた。

花のある地域を目指して

就農当時は、地元のブランド「安代りんどう」の鉢花を栽培していたが課題もあった。土の配合など品種ごとの特性を掴みきれず、試行錯誤の年月を過してきた。「鉢花は生産者が少ないこともあり栽培体系の最適化に時間がかかった」と話す。鉢物研究会のメンバーらと情報を持ち寄り、現在では安定した品質の生産につなげている。

花

また、現在は省力化や低コスト化の取り組みも進めている。鉢花は苗をポットに仮植えして約1か月管理し、出荷用の鉢に植え替えて出荷に向けて仕上げていく。「現在は出荷用の鉢に直接苗を植えて出荷できる品質に持っていけるか試験している」と話す。

花の世話をする様子

令和3年には経営を父から受け継ぎ意識も高まる中、続けてきたシクラメンの栽培をやめた。「シクラメンは好きだが、地元には『安代りんどう』というブランドがあり、地域独自の産業でもある。ここでしか作れないものを大切にしようと方針転換した」と話す。現在は夏から秋のリンドウ、秋から春のエンジェルウィングスを経営の柱にした。

また、今年からプリムラの栽培を始めるなど、新たな挑戦にも取り組んでいる。「求められる鉢花は時代と共に変化するので市場や消費地に足を運びリサーチすることを大切にしている。ニーズを敏感に感じ取り、必要とされる鉢花を作っていきたい。そして、通年出荷できる施設栽培のメリットを生かし、リンドウ以外にも花がある産地になれれば」と話す。

花の世話をする様子

ブレずに鉢花を作るというビジョンを進み続けている有城さんだが「鉢花を作るために必要なハウスや設備を整えてくれた父には感謝している」と笑顔をみせる。地域も消費者も、有城さんが育てた花で笑顔にしてくれそうだ。

プロフィール

八幡 有城

八幡 有城 やはた ゆうき さん

ドライブが好きな有城さんは「時間があれば車中泊の旅をしてみたい」と笑顔で話す。

※広報誌「夢郷」 2025年3月号掲載時の情報です。掲載情報が変更となっている場合がございます。