八幡平市で水稲を生産する「㈱かきのうえ」は作業の平準化による水稲の作付け拡大に取り組み、2020年から初冬直播き栽培を試験導入している。25年産の水稲の作付けは13ヘクタール増の約50ヘクタールを予定し、内15ヘクタールを初冬直播きによる栽培を計画している。11月上旬から始めた初冬直播きは10ヘクタールを終え終盤を迎えている。代表取締役の立柳慎光さんは「これまでの実証で初冬直播き栽培に手応えを感じた。25年度産は作付面積の拡大に合わせ、前作の60aから大幅に面積を拡大した」と話す。
初冬直播きは、コーティングした水稲の種もみを降雪前に直播(ちょくは)し、春に出芽させる技術で、春に集中する農作業の軽減により労働力や設備投資を抑えたなかで規模拡大が可能な技術としても期待されている。
同社では、従業員1人とアルバイト1人を雇用し、妻と両親の6人で本年度は37ヘクタールを作付け。育苗ハウスは10年前の就農当時のまま16ヘクタール分の苗が作れる3棟だけだ。密苗や湛水直播などの組み合せで面積を拡大してきた。立柳さんは「初冬直播きは圃場条件や天候に左右はされるが、春の乾田直播などでリカバリーも可能だ。作業分散による規模拡大につながっている」と手応えを話す。
八幡平市認定農業者協議会は11月2日、同市で「稲作の作業分散のための直播技術講演会」を開き、市内外から約120人の生産者が参加した。岩手大学農学部で初冬直播きの研究を主導する下野裕之教授らが、初冬直播き技術について講演。立柳さんは直播栽培による作業分散の取り組み発表し、播種作業を実演した。 同協議会の田村道行会長は「担い手に農地の集約が進んでいるが、育苗ハウスや労力不足などの課題もある。初冬直播き栽培は、これらを解決する一つの手段として期待している」と話す。