東北で唯一開かれる平庭闘牛大会で、女性の勢子(せこ)として活躍する小野沢りんさんは、自分よりはるかに大きい闘牛の手綱を握り、激しくぶつかり合う闘牛をサポートしている。女性の勢子として大会で手綱を握るのは小野沢さんが初めてで、牛と呼吸を合わせた戦いで会場を盛り上げている。
小野沢さんは、放牧適正が高い日本短角種に興味を持ち、2022年8月から久慈市の地域おこし協力隊として、同市で生産される山形村短角牛の生産や精肉加工の仕事を手伝っている。闘牛を管理する生産者もいることから、勢子としての練習も積んできた。22年は勢子として闘牛場内に入っていたが、今年から闘牛の手綱を握り大会を盛り上げている。
9月3日に開かれた平庭闘牛大会しらかば場所で2頭の闘牛の勢子を務めた小野沢さんは「勢子は牛の状態を見ながら綱の長さを変えたりと、牛と呼吸を合わせて動くので見ためより難しい。先輩から教わりながら経験を積み、勢子としての技術を磨いていきたい」と話す。
勢子は、牛の状態を見極め、威勢をつけたり、ケガをさせないように時には体を張って牛を守るほか、同大会は勝敗を付けないのが特徴で、どちらかが優勢になった時点で勢子が勝負をやめさせ引き分けにする。負け癖をつけないことで、素牛として各地で活躍し、闘牛の育成産地としての役割を担っている。
また、地元で生産される山形村短角牛に惚れ込小野沢さんは「山形村短角牛は赤身肉で食べた時の風味が良いので多くの人に味わって欲しい。そのためにも、勢子として成長し注目してもらえれば山形村短角牛のPRにも繋がる。いつかは横綱の取り組みで手綱を握ってみたい」と笑顔を見せる。