令和3年の春に家元就農した湧馬さん。現在は、法人化した合同会社湧くわく工房の社員として両親や祖父母と約28haの水田で米作りをしている。学ぶことはまだまだ多いが、効率よく農作業ができるよう、確実にできる事を一つずつ増やすことを意識している。
幼少期、父や祖父と一緒にトラクターに乗るのが好きだった湧馬さん。「トラクターやコンバインなど、農作業で使う機械が家にあったので、興味を持つようになっていました」と話す。農業というよりは農業機械への興味が強かった。その後、将来の進路について具体的なことは考えていなかったが、もし農業を継ぐ時に困らないようにと盛岡農業高校へ進学した。
高校の授業では、農作業の基本を学ぶことができる反面、すべての作業ができる訳ではなかった。「高校は寮生活だったので、休日は家に帰って農作業を手伝うようになりました」と話す。畑の草取りなど基本的な作業から水田の荒かきなど、学校で学んだことを実家で実践する日々が続いた。そして、できた時の喜びが、いつしか農業の楽しさに変わっていった。高校1年生が終わる頃には、卒業後は実家で働きたいという気持ちを両親に伝えていた。
高校時代は、学校での学びと実家での実践を繰り返していたこともあり、就農後も大きなミスもなく、父の指導で米作りをしていた。しかし、高校時代の手伝いでは目にしなかった作業も多かった。「高校生の時は、父がある程度準備をしてくれた状態から作業していたが、今は、その準備も自分の作業の一つになっています」と話す。稲刈り一つをとっても、コンバインをトレーラーに載せて圃場まで運搬しなくてはならない。「就農前には見ることがなかった作業がたくさんあります。今は機械操作が不慣れで時間が掛かっているが、上達することで作業効率も良くなると考えています」と話す。
日々の農作業の中で「できる」が増えることで、作業の効率化に繋がることはもちろん、農業への喜びも感じている。
現在では約28haの地域の水田を管理する合同会社湧くわく工房。祖父の代から始めた「アイガモ農法」も、父に、そして湧馬さんにと受け継がれようとしている。「アイガモ農法は祖父の代から始めたこだわりの米作り。そして、この地域にも米作りをやめざるを得ない方もいます。一歩ずつ前に進み、この地域の田んぼを守れる存在になれれば」と話し「いい米が出来たときに一番やりがいを感じています。新米はおいしいですからね」と笑顔をみせる。
一方で、将来を見据えて就農に合わせ資格を取得しドローンを導入している。「スマート農業に興味はありますが、まず今年はフォークリフトの免許を取得予定です」と、一つずつ「できること」を積み重ねている。20歳という若い世代の米作りへの挑戦はこれからも続いていく。
子どものころからゲームが好きで、現在は友達とオンラインゲームを楽しむ湧馬さん。
※広報誌「夢郷」 2023年4月号掲載時の情報です。掲載情報が変更となっている場合がございます。