盛岡市東部に位置する薮川地区で、和牛繁殖牛28頭と育成牛6頭を飼養する輝美さん。5年前の春に両親から経営を受け継いだ。
5人兄弟の末っ子として生まれ育った輝美さんは、小さい頃から牛の世話をしていた。
「その当時は、もしかしたら継ぐのかなとは思ったことはあったが、両親から継いで欲しいと言われたことはなかった」と当時を話す。高校は家を出て下宿生活をし、卒業後は一般企業に就職した。その頃は家の牛の世話をすることもない時期が続いた。
その後、地元に戻って就職した輝美さんだが、仕事をしながら両親の手伝いをするようになり、子どもの頃から手伝ってはいたが、仕事としてのやりがいと面白さも感じるようになっていた。「生き物が相手なので大変なところもありますが、手を掛けた分だけ自分に返ってくるのでやりがいを感じるようになった」と話す。
長年、兼業農家として続けてきた輝美さんだが、両親も高齢で機械の運転などの不安を感じ、勤めていた仕事を辞めて両親から経営を受け継ぎ、平成28年の春から専業としての経営を始めた。
子どもの頃から手伝ってきた輝美さんだが「仕事の内容は今まで手伝ってきているので分かるが、自分が経営するということにすごい責任感を感じた」と話す。今までは、両親が出ていた集まりにも輝美さんが顔を出すようになり、周りからの見る目も変わってきた。その反面、多くの人と出会い学ぶこともたくさんあった。
「同じ畜産農家や先輩農家の皆さんの話しを聞き参考にしながらやっています。まだまだ勉強中の自分にとっては貴重ですね」と笑顔で話す。また、購買者からも話しを聞き、どういう子牛が求められているのかを研究している。
そして現在、特に意識しているのがJAで推奨している300日齢以内での出荷を心掛けている。「肥育農家が育てやすいよう、変な癖のない子牛を出荷することを意識している」と話す。
自分が経営することを意識した頃から、飼養頭数を無理のない範囲で増やしてきた輝美さん。自分がやるべきこと、購買者が求めることを着実に実行し、経営者としての意識の高さが感じられる。
「現在は冬場に別の仕事もしているが、将来的には繁殖農家だけで成り立つ経営を目指している。そのためにも、既存の牛舎の改築などをしながら規模拡大も考えていきたい」と話す。そして、餌となる牧草の適期刈り取りで良質なエサを確保し、より求められる子牛を追究している。
「以前、水分が多く冬に凍らせたこともあった。収穫時期がずれることで餌の栄養も変わってくるので、まずは良い餌作りを徹底したい。牛は生き物なので、しっかり手を掛けた分が自分に返ってくる。それが、この仕事のやりがいだと感じている」と目を輝かせる。
笑顔の中にも経営者としての意識の高さが伝わってくる。
冬場は、近くの岩洞湖でワカサギ釣りをして気分転換をする輝美さん。展示会で農機の新製品もチェックしています。
※広報誌「夢郷」 2021年4月号掲載時の情報です。掲載情報が変更となっている場合がございます。