岩手県沿岸部の最北端に位置する洋野町で、経産牛90頭と未経産牛50頭、黒毛和種の繁殖牛10頭を飼養し、両親、祖父母と一緒に酪農を営む利月さん。岩手県立農業大学校を卒業後、北海道の酪農家で研修し、昨年の6月に実家に就農した。
3人姉弟の長男として生まれ育った利月さんは「いずれは実家を継ぐのかなとは思っていましたが、両親が忙しくて手が回らない時に手伝ったくらいで、高校を卒業するまで実家の仕事はほとんどしたことはありませんでした」と話す。
すぐに就農してほしいとも言われていなかった利月さんは地元の普通高校に進み、周りが就職活動をしていたので普通に就職を考えていたが、両親から農業大学校への進学を勧められた。「将来、実家を継ぐためには必要なので、親の勧めもあり進学の道を選んだ」と、当時を振り返る。
農業大学校に進み、酪農のことを学び始めた利月さん。最初に感じたのが、両親の毎日の作業内容が理解できたことだった。「将来は…。と、漠然とは考えていましたが、実家で手伝うこともなく、どんな作業をしていたのか大学校に入ってから見えてきました」と苦笑い。
しかし、酪農について学んでいくうちに色々な事が分かり、牛の接し方も変わってきた。酪農という仕事を実感したのが、酪農家へ実習に行った大学校1年生の時だった。牛の世話だけではなく、牧草やデントコーンの刈り取りの時期だったため多忙な日々が続いた。
「正直、大変でしたが色々な経験をすることができました。この時、酪農は生活の一部だと感じました」と振り返る。
そして、2年生の時に酪農への興味がより深まる出来事があった。大学校で初めて出品参加した共進会だった。会場で見た牛に魅了され、清水牧場も出品する東日本ディリーショーに足を運んだ。会場にいる牛を見て「牛の雰囲気やオーラの違いを感じました」と、酪農に対する気持ちが高まった。そして、社会人になっても共進会という勝負の世界があることを知った。
農業大学校を卒業後は農業関係の仕事をしようと考えていた利月さんだったが、共進会の会場で出会った先輩農家の紹介で、北海道北見市の酪農家へ研修に行く事になった。「乳牛の改良技術や飼養管理を学ぼうと思い、普段の仕事の時間以外でも夢中になって勉強したため、なかなか自分の時間をつくれませんでした」と、当時の様子を話す。
しかし、実習した農家の方からは、将来の経営者として指導してもらい多くの事を学ぶことが出来た。「粗飼料収穫や日々の飼養管理など、すべての仕事が、良質な生乳の生産に繋がっていると感じた」と目を輝かせる。大学校から北海道の研修まで、多くの人と出会った利月さんは、人とのつながりを大切にしている。
「厳しい経験もありましたが、今では良かったと思えます。もっと勉強してくればよかったと反省しています」と苦笑いし「今後は多くの同世代と酪農を一緒に頑張り、地域を盛り上げていきたい」と目を輝かせる。そして「理想の牛」を追い求める頼もしい担い手だ。
「スポーツはやるのも見るのも好き」と話す利月さんは、部活で野球やバスケットボールをしてきました。現在は地元のチームに所属しバスケットボールを楽しんでいます。
※広報誌「夢郷」 2020年5月号掲載時の情報です。掲載情報が変更となっている場合がございます。