未来農業創造人

江刺をトマト産地として広めたい

帰郷して農業の道へ

JA江刺玉里支店から車で15分余り、水田地帯を通り過ぎて栗林の茂る丘陵地帯に入っていくと、数棟のビニールハウスが見えてきた。 今回の未来農業創造人は、標高300m の高原地帯でトマトを作っている吉田雄次郎さんだ。緑色の「純農Boy」の帽子がよく似合っているが、前後逆にかぶっているのは、「選ばれたのは去年のことですから」と、控えめな気持ちを表しているらしい。

吉田雄次郎さん
吉田雄次郎さん

一関の高専で学び、一旦は首都圏に就職した吉田さんが米里に帰郷し、就農したのは26歳の時である。故郷に戻り、就職先を探していたある日、テレビで千葉県の大農経営を見て驚いた。「中山間地が多い岩手の農業しか見たことがなかったから、こんな大きな経営もあるのかって。 農業はやり方次第で楽しそうだ。実家には土地もあるし、ハウスもある。私は次男だから継がなければというのはないが、自分から農業をやりたいと希望した」と振り返る。

実家が農業とはいえ、それまで違う道を歩んできた吉田さんは、「まずは勉強」と江刺の菅野ファームで経験を積んだ。 「新しい技術で格好いい農業をやりたい。農業体験+新しい挑戦という観点で、多種類の作物に取り組んでいるところで学びたかった」と吉田さん。 菅野ファームはトマトの水耕栽培をはじめキュウリ、ブロッコリーなど果菜や葉根菜を栽培しており、研修先には最適だった。 少しでも早く就農したかった吉田さんは、2年間の研修制度を1年で修了し、その間、県立農業大学校の講習会や起業塾にも参加するなど精力的に勉強を重ねた。

トマトを栽培作目に選定

実家は水稲とキュウリが中心の農業だったが、吉田さんは研修先での経験を踏まえて栽培品目にトマトを選んだ。 その理由について、父親のハウスを利用できること、小規模経営の場合はJAの系統出荷のほうが手間もかからずリスクも少ない。それが利用できるという利点を挙げる。 そして何より、「同じ集落にトマトの栽培技術が高く、県内トップクラスの単収を上げている方がいて、それが参考になった」と話す。

独り立ちしてから4年、父親のハウス3棟で8aから出発し、現在18aまで拡大した。品種は人気の桃太郎、りんか、桃太郎はるかに加え、今年は、桃太郎ワンダーも試作している。 「半高原地帯のここは昼夜の温度差が大きく、夏秋産地に向いている。JAのトマト部会は活発で、みんなでより良い品種を検討したり、研究しています」と意欲的だ。

ハウスで18aを栽培
ハウスで18aを栽培

「でも、今はまだ生産技術を確立しなければ規模拡大は無理。1反当たりの収量を上げることが第一の課題で、2年後に10a増やしたい」という目標を立てている。 規模を増やせば人手も必要になってくる。「種山の麓に高齢者などをうまく雇用しているピーマン農家の方がいるので参考にしていきたい。 これからもいろんな先輩を見習っていきます」と言い、現在は収穫の最盛期にパートを1人雇っている。

今後の目標は、トマトをリンゴや米に並ぶ江刺ブランドの1つに押し上げること。 「JA江刺の作付面積が減っているので、新規就農者や若手生産者にトマトをやってみないかと呼びかけたい。 “JA江刺のトマト”と消費者が認識してくれれば産地としてプラスになる。その一端になれるよう経営を拡大していきたい」と結んだ。

収穫の最盛期を迎えた桃太郎ワンダー
収穫の最盛期を迎えた桃太郎ワンダー

プロフィール

吉田 雄次郎さん

1988年奥州市江刺生まれ。一関工業高等専門学校物質化学工業科卒業。 川崎市の石油化学関係の工場で5年間働いた後、26歳で帰郷。1年間、奥州市内の農家で研修してから就農。 現在、岩手県農村青年クラブ連絡協議会(4Hクラブ)会長。第7代目の「JA いわて純農Boy」に選出された。

JAへの要望

地元のJA はそんなに大きくないので農家とのつながりは強いと思う。 だからこそ動きやすいという利点があり、それを生かして新しい販路の開拓など売り方を工夫してほしい。 売ることを任せれば、俺たちは生産に集中できる。「売る」ことがもともとJAの出発点だと思うので、期待しています。

JA江刺 玉里支店

住所
〒023-1134
奥州市江刺玉里字大松沢136-5
電話番号
0197-36-3121
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