ごはん・お米とわたし

協力の美味しさ

佐藤　愛望
岩手県立一関第一高等学校附属中学校１年

　「よろしくお願いします」広い田んぼに、元気の良い声が響いた。昨年、小学校六年生の私達も同様だった。あいさつが終わると、たくさんの人達が田植えを始める。機械で植えれば速いのだが、すべて手作業で植えるのだ。すると、農家の方は笑顔で語る。
「みんなで作ったお米は特別美味しくなるぞ。さぁ、頑張ろうね。」
　私は、お米なんて、どれも同じなんだろうなと思いながら、シブシブ苗をつまんだ。すると横で楽しそうな声が聞こえてくる。
「今年最後の田植えだ！おじさん達に俺らの団結パワー見せてやれ！」
クラスの男子は、言葉通りに協力して、どんどん先に進んだ。この田植えは、三時間程で終わった。次に行う作業は稲刈りで、秋に実行する予定だ。私達は、お米につける名前とイラストを考えていた。その年は雨が多く、風も強かったため、名前は「雨ニモマケズ」に決まった。名前が決まり、稲刈りの準備が始まった。杭を組み立て、稲を干せるようにした。稲を束ねるための藁は、農家の方が用意してくださり、順調にスタートをきった。
「あぁ。腰が痛い。大変じゃないんですか？」もくもく作業するおばさんに当たり前な疑問をぶつけてみた。すると予想外な答えが跳ね返ってきた。
「もう慣れっこだからねぇ。それに、みんなが喜んでくれるために頑張るんだもの。むしろ楽しいわよ。」
私は少し刈っただけで疲れたのに、おばさんは笑いながら作業を続けたのだ。これだから私は自分の故郷、そして、心の優しい地域の人が好きなんだなとお米作りを通じて感じさせられた。稲干し作業は重くて大変なので、リレーのように運んだ。仕事は予定より一時間も早く終わった。私達の学年目標のキーワードは『強い団結力』だ。この稲刈りに引き続き、私達の『団結力』は脱穀作業まで続いた。上の稲は背の高い人が下ろす。
「おぉい。これ藁がほどけてるから集めて！」二、三人で駆けつけて集めた。ふと、私は米作りをしていて、変わった事に気付いた。それは、男女共に仲良くなっている事だ。いや、仲良くなった事に間違いはないのだが、私の意味する仲良しは『助け合い』が出来るようになったのだ。脱穀が終わってからというもの、話し合いが自然に進められ、本当に良いクラスになった。お米の注文が殺到し、休み時間も、放課後も、笑顔を絶やさず、米の袋詰めをした。かれこれ百五十程詰めたのではないだろうか。すべての作業が終了した時、全員を集めて先生は、
「みんな、よく頑張ってくれたな。俺は、この米作りでクラスの雰囲気が明るくなってすごくうれしいぞ。」
私も思っていた事だった。手間をかけて作ったお米は、一人暮らしのお年寄りと、注文を頂いた方にお配りした。私の家にも、雨ニモマケズのパッケージを見つけた。その日は祖父が、私よりも喜んでいた。
「孫が作ったお米かぁ。早く食べたいな。」
私はその日、米作りの事をたくさん話した。農家の方が仰ったあの言葉
「みんなで作ったお米は特別美味しいぞ。」
これを疑っていた私は何処に消えたのだろうか。自分達が何時間も努力した証し。そして米作りにあたって築いた団結力は、私達の米が結果へ導いてくれたのだと感謝している。
　今も小学校での友達とも繋がりが続いており、離れていても寂しい事はない。私は、家での米作り作業を手伝うようになった。この米作りは、地域の誇りであり、伝統である。そして、心の豊かさも育ててくれるのだ。小学生が田植え道具を持って登校した。今年もまた、あの広い田んぼに、小学生達の元気な号令が響いたのであろう。
「よろしくお願いします！」

米作り、一年

小山　希来
一関市立室根東小学校４年

　今は八月の下じゅんです。米の収かくまであと一ヶ月ぐらいになりました。いねは、少しずつ黄色くなり、実がおじぎをするように下がってきてます。今年もほう作です。
　私は、毎年米作りのお手つだいをしています。それは、大人になったら米作りをしてみたいと思っているからです。今年は、分かったことや大切だと思ったことを記録することにもちょうせんしてみました。
　五月は田植えの季節ですが、田んぼは去年のいね刈りをしたままなので、刈りかぶがのこっています。刈りかぶを集めて、土をととのえて、水をはり、ようやく田植えができます。機械で植えるのは完全ではありません。機械で植えられない所があり、そこは手で植えるのです。学校の帰りに、私はぐうぜんタオルを持っていたので、す足になり、おじいさんといっしょになえを植えました。大きな石が足の下にあると取りのぞきました。田んぼいっぱいに植えられたなえを見て、じょうぶに育ってほしいと思いました。おじいさんは、一仕事終えて、ほっとしていました。
　田植えの後は、私にできることはありませんが、おじいさんは、水のかんりをします。水の量の調せつです。私には全然わかりませんが、おじいさんは田んぼを見てすぐに判断して、水の出る所を半分開けたり、全開にしたりしてます。水を入れはじめてもまだ足りない時には、続けて水を出したりもします。こんなおじいさんを見ていると、米作りのプロなんだなとしみじみと思います。
　今年は夏がすごく暑く、いねはぐんぐん成長しました。ここでもう一つ大変な仕事があります。それは、草を取ることです。いねが育つにつれて草もどんどんのびてきます。いねは同じ高さに成長していますが、草はイネよりも二十センチぐらいとびぬけています。そのため、草といねの区別はつきますが、草は根っこもはっていて取りにくいのです。おじいさんは、汗びっしょりになって草をぬきます。大切なお米です。草ではなく、いねにたくさんの栄養分がいってほしいです。おじいさんは、田んぼのまわりの草刈りもして、いね刈りを待つだけになりました。
　このごろ思うことがあります。それは「ごはんの味」です。一つは、一年間のうちでも味が変わってきていることです。また、同じ種類のなえを植えても、年によってびみょうにちがうことです。今年とれた米の味が今から楽しみでなりません。新米を食べるのが今から待ちどおしいです。これからもおじいさんに米作りをがんばってほしいと思います。私もできる限りお手伝いをしたいと思います。
　一年間記録した私の「お米ノート」には、ぎ問の答えや、田んぼのじょうたい、毎月の仕事のこと、そしていねを干す時のポイントなどが書かれています。来年も米作りのことを記録していきたいと思っています。

幸せの欠片

泉田　陽菜
盛岡市立北陵中学校３年

　私は、あの日食べたおにぎりの味を、絶対に忘れない。
　私の祖父母の家には、大きな田んぼやビニールハウスがあって、毎年沢山のお米や野菜、果物を育てている。トマト、ピーマン、ブルーベリー、ぶどう、すいか、メロンなど、美味しい物は数多くとれるけれど、その中で私が一番大切に思うのは、お米である。いつも私の家においしいお米を送ってくれるので、私や弟は小さい頃から毎日このお米を食べて育ってきた。皇居に献納したこともあるお米で、とてもおいしいし、農薬を出来るだけ使わないで作った安全な米なので、地元のびっくりドンキーでも扱われているらしい。そんな素晴らしいお米を、この十五年間、毎日食べられたことは、本当に幸せだと感じている。
　でも、その幸せを改めて強く実感させられる出来事が起きた。それは、私が四年生だった年のあの日、三月十一日に起きた、東日本大震災である。私達が住む地域では、二日後の夕方まで停電になっていた為、炊飯ジャーでご飯が炊けなかったし、オール電化でガスではなくＩＨクッキングヒーターの為、お湯を沸かすことすらできなかった。ジャーに残っていたお米も、冷蔵庫に入っていた食料もちょうど少なくて、しばらくの間はスーパーの長蛇の列に並んで、決められた数の限界まで買った食べ物で乗り切っていた。けれど、停電二日目に祖父母から電話が掛かってきて、
「大丈夫か？じいちゃん達の米食って、元気出せな。」
と言われた。米が炊けない事を話すと、祖父母の家の方では停電が起きていなかったようで、驚いていた。そして、
「じゃあ今すぐあったけーご飯持ってくから、待ってろ。」
と言われ、すぐに電話が切られた。――その約二時間半後、温かくて大きなおにぎりをいっぱい持った祖父母が家に来た。ガソリンだって貴重なのに、遠くから車でわざわざ来てもらって、本当にありがたかった。久しぶりに温かい食べ物を口に入れた瞬間、涙で視界がにじんだ。しょっぱいおにぎりは、かめばかむほどお米の甘みが出てきておいしかった。その日はとても寒い日だったけれど、私たち家族は身も心もぽっかぽかになった。
　お米は人を幸せにする。ある時は、寝起きの私がジャーを開けたとたん、ふわあっといいにおいでいっぱいになり、それにつられてついつい朝から盛ってしまう、山盛りごはん。またある時は、午前中の授業が終わりに近づく頃、待ち遠しくなる愛情と栄養たっぷりの母のキャラ弁。放課後部活で三時間、思いっ切りテニスをした後の、貴重な夕ごはん。野外炊飯で友達と作った、思い出いっぱいのカレーライス。大会での試合前、パワーをつけるために食べた、ちょっぴりすっぱい梅干しおにぎり。事あるごとに、家でお祝いの度出てくる、赤飯やちらし寿司。具合が悪くても食べたくなるおかゆ。お茶漬けやオムライス、チャーハンも親子丼も、全部おいしい。卵かけご飯や納豆ご飯も飽きないおいしさで、時時かけるすじこやたらこ、いかの塩辛ごはんも大好きだ。パン屋に行って一番最初に探すのも、小学校の給食で出るパンの中で一番好きだったのも、米粉パンだった。家族の為にといだお米や、とぎ汁の肥料をあげて元気に咲く家の花を見ても嬉しくなる。田んぼで風になびく稲穂も、きれいな田んぼアートも、きっと、みんなにとっての「幸せの欠片」なのかなと思う。
　甘くて、ふんわりやさしい味。光を浴びて、もやもやと湯気を立てる、真っ白のまあるいきらきら。これは、今日のわたしの朝ごはん。いつもと同じ朝ごはん。とびきりおいしい朝ごはん。これからも、この祖父母の愛が詰まったお米一粒一粒を大切に食べて、いつまでもあの味や温かさを忘れずに生きていきたい。

はじめてのもちつき

及川　葉月
奥州市立田原小学校３年

「葉月、もちつき行くからね。」
とおばあちゃんが、にこにこしながら言いました。わたしもにこにこえ顔になりました。
　明日は、地いきのみなさんともちつきをする日。その米は、上級生が、学校田で大切に育てた米です。わたしは、もちつきをしたことがないので、
「明日、楽しみだね。」
と前の日から友だちとも話しながら、わくわくして待っていました。
「こんにちは。よろしくおねがいします。」
みんなで、元気にあいさつ。
　その後、会場には、待ちに待ったふかしたもち米がとうちゃく。あつあつのゆげが出ています。ほのかなもち米のにおいも、あたりいっぱいに広がりました。
　やり方を教えてもらった後、さあ、もちつきのはじまりです。一番さいしょに、史結さんがつきました。
「よいしょ。よいしょ。」
自ぜんに、みんなのかけ声がわきあがりました。史結さんは、とても上手にもちをついています。すごいな。わたしもあんなふうにできるかな。どきどきしながらじゅん番を待っていました。
　いよいよ、わたしの番です。きねってい外に重い。それを持ち上げると、もちもくっついてきました。上手くうすのまん中にきねをつけるか心ぱいでしたが、思いっきりふり下ろしました。何回かは、いきおいあまって、うすにぶつかってしまうこともありました。
「だいじょうぶだよ。」
おばあちゃんのやさしい声が聞こえると、安心してつづけてつくことができました。
　もちは、あんこもちにして食べました。おいしい。今まで食べたことのない特べつなあじでした。地いきのみなさんにお世話になったもちつき。本当にありがとうございました。

はじめてのおにぎりづくり

菊池　智果
奥州市立木細工小学校１年

　「なんでおべんとうつくっているの。」
あさ、にかいからおりてくると、おかあさんとおねえちゃんが、たまごやきをやいていました。おいしそうなからあげもあります。
「おでかけするからだよ。」
おかあさんは、いそがしそうです。
「ともかもやる。」
わたしは、いそいできがえて、てをあらいました。
　おかあさんがおにぎりをにぎっています。ゆびをさんかくにまげて、ぎゅっ、ぎゅっ。みぎてでひっくりかえして、また、ぎゅっ、ぎゅっ。なんかいかくりかえすと、きれいなさんかくのおにぎりができます。
「ともかも、おにぎりつくる。」
あつあつ、ほかほかのごはんをラップにのせて、なかにうめぼしをいれました。ラップをくるんとまるめて、にぎってみました。おかあさんとおなじように、ぎゅっ、ぎゅっ。
「あれぇ、くずれてきた。」
にぎったおにぎりが、パカッとわれてしまいました。
「もうすこし、ちからをいれてごらん。」
おかあさんにおしえてもらって、さっきよりつよく、ぎゅう、ぎゅう。
「わあ。へんなさんかくになっちゃった。」
おかあさんみたいにつくるのは、むずかしいなあ。おかあさんがやっていたみたいに、ゆびをさんかくにしてやってみました。
「わあ、だんだんじょうずになってきた。」
さんこめのおにぎりは、だいせいこう。やったあ。おかあさんもにこにこしていました。
　できたおにぎりと、おべんとうをもって、うみにいきました。うみのちかくにくるまをとめて、たべました。
「でこぼこさんかくのおにぎりもおいしいな。」
パパもにこにこわらってたべています。またみんなのためにおにぎりをつくりたいなあ。

米一粒の大切さ

菊池　みずき
奥州市立木細工小学校６年

　「米一粒も流さねえようにとぐんだぞ。」
妹の美桜が米とぎをしていると、ひっこが言いました。私が米とぎをしていても同じことを言います。
「ひっこ、どうして美桜にも私にも同じこと言うの。」
何度も同じことを言うので、少しむっとして聞いてみました。
「それは、米一粒でも大切だがらよ。」
「米だったら親せきの家からもらえるじゃない。」
私の家では、今は米作りをしていないので、もらって食べています。大切ではないとは思わないけれど、一粒くらいこぼすのは、仕方がないと思っていました。
「今は米作っているところは、全部自分の家でするけれど、昔は、十五、六けんの家がいっしょになって田植えをしたもんだ。おらの家でもそうだった。機械なんてねえんだもの。並んで五列ずつ植えたもんだ。」
学校でも田んぼで米作りをしています。機械を使わずにやるように田んぼの先生の春男さんが中心になって体験させてくれます。田植えをする時は、高学年は二列、低学年は一列植えました。昔の人は一人でたくさん植えていたんだなと思いました。
「だったら、早く終わったんだね。」
学校は今年で全校で十一人になったので一時間半ぐらいで田んぼの半分くらい植えました。
「そんなことはねえぞ。田んぼは一つでねえもの。一週間はかかったぞ。こしが痛くなってな。」
　私は最初のむっとした気持ちがなくなってもっと聞いてみたくなりました。
「それじゃあ、休む時は、おいしいものを食べていたんだね。」
学校では、田植えが終わると、あんもちやしょうゆだんごを食べます。みんなの楽しみです。
「おいしくないわけではないけれど、たばごどきには、生のうどの皮をむいてみそをつけで食べだな。あとは、小麦まんじゅうさ。」
どうしておにぎりを食べなかったんだろうと思いました。
おにぎりのほうが力が出そうなのに。
「米なんてもったいなくて食べられねがった。米一粒でも大切にしたもんだ。」
　今は、機械を使うので米作りに時間がかからなくなっています。けれど、ひっこは昔の農作業の大変さを知っています。だから、米とぎのとき、米一粒でも流さないようにと言うんだと分かりました。でも、農作業が機械化で楽になった今は、米を大切にしていないでしょうか。そんなことはないと私は思います。昔も今も米作りをしている人は、自分が育てたお米を大切に思っているはずです。心をこめて作ったお米一粒でも大切にする心を私はひっこから学びました。